さて、本誌に連載されていた野崎六助の「サイコドラマ・サイコパシー」が『異常心理小説大全』(野崎六助/早川書房/二〇〇〇円)としてまとまられた。いわゆるサイコ・ホラーを中心にしたブックガイドの体制を取っているが、ひたすら犯人の残虐さを競いあうようなミステリをナビゲートするわけではない。目指すのは小説そのもの(あるいは作者そのもの)のサイコ性なのである。ぜひ一読を。必ずや新しい発見があるだろう。
最後にサイコ・ホラーを中心にした評論集『異常心理小説大全』(野崎六助/早川書房)を挙げておきたい。本誌連載の単行本化である。『羊たちの沈黙』以降ブームのようになったサイコ・ホラーだが、筆者が論じるのは作中人物の残虐さなどではない。むしろ小説そのものの歪みがいかに小説を支配しているかが語られる。きちんと解説になりながらもときに小説そのものよりもおもしろい評論として大いにお勧めできる。
柳下毅一郎 ミステリマガジン97.12&98.3